『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』著者インタビュー(3)

『桜鱒の棲む川』は、私が今まで書いた本の中で
いちばん気持ちの入った一冊になりました。

インタビュー 水口憲哉 氏

●新刊単行本『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』がいよいよ小社から発行となった。著者の水口憲哉氏の全国のサクラマスの棲む川を巡る旅を『フライの雑誌』誌上で追いかけて幾星霜。企画を立ててから数年がかりでの上梓である。

●「この本を編集者は当初〝世界で初めてのサクラマス本〟というふれ込みで宣伝したいと言ってきたが…」と、本書のあとがきにあるが、そう言ったのは私(堀内)で事実である。

●水口氏はエキセントリックな表現を使いたがる私をいさめ(くわしくは本書を)、つづけて「サクラマスの過去と現在、そしてこれからについてひとつの考え方をまとめたという点において類書がないという自負はある」と書いてくださった。編集者としてにんまりしたくなる。

●本稿の収録は、水口氏の母校で現在はそこの名誉教授でもある品川の東京海洋大学構内にある池のほとり。ソメイヨシノならぬ八重桜が今を盛りと咲き誇っている卯月のとある午後であった。  (編集部/堀内)

〈インタビュー  第1回
〈インタビュー  第2回
〈インタビュー  第3回

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サクラマスの最新知識をすべて網羅

サクラマスに関する最新の知識で、日本語の本では初出の情報もいくつかあります。サクラマスについてこれまで言われたり関心をもたれたりしていることは、本書の中でほぼ言い尽くしました。

あとはサクラマスが持っている魅力をどう味わっていくか。自分たちが一人一人のサクラマスをみつけてどう楽しんでいくかということでしょう。

サクラマスとの新しい関わりが始まる

本書で触れているもうひとつの話題─ダム問題についても触れておきます。

これは昨年の政権交代とからんできます。政権交代がいいかげんで「コンクリートから人へ」と舵をとりきれていないから、色々な問題が起きています。全国の不要なダム工事をとめられていない。

私は「政権交代はサクラ革命だ」と表現したのですが、どうもその結果がはっきりしてきました。

ダム計画をとめられるかどうかは、政治そのものです。つまりは利権で物事が動きます。

サンル川、小国川ダムは止められるでしょうが、岩手県の津付ダムをとめられるかどうかは難しいところです。

しかし地元住民の熱心な取り組みで、ダムを止められる可能性はまだ残っています。

6月5日(土)に地元の「めぐみ豊かな気仙川と広田湾を守る地域住民の会」が主催しての『桜鱒の棲む気仙川トーク』というイベントが開かれます。私はそこへ呼ばれています。地元住民の方と気仙川とサクラマスの未来について語り合うのが今から楽しみです。

本書では全国のサクラマスの棲む川の旅をしてきました。これから全国の川で、サクラマスとサクラマスに関心をもった人々の新しい関係が始まるでしょう。本書がそのきっかけとなってくれればこれ以上の喜びはありません。

『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』は、私が今まで書いた本の中で、いちばん気持ちの入った一冊になりました。

水口憲哉氏

(談)

〈インタビュー  第1回
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